きっとうまくいく

今日は映画の考察をします。
選んだ映画は・・・タイトルにもう出ていますね。(笑)

「きっとうまくいく」

2009年に制作されたこの作品。もう10年以上も前(!)ですが、今見てもこの作品にはどっぷり浸かって楽しめるし、
背景で取り上げられている問題意識についても、他国で見ている人にもまだまだに刺さる。
問題提起したポイントが普遍的かつ先進的です。
※先進的と言うのは、ITイノベーションと人間のジレンマが鍵になっている所があり、1990年代より以前では生まれなかったテーマもあるかな?と思うためです。
しかしながら、ジレンマというものはそもそも人にとって常に普遍的ではないでしょうか。


・どんな話?

経済発展の勢い盛んなインドで「国の未来のために」と奮闘するエリート大学生が、
レールが敷かれた大学での勉強に疑問を抱き、真の学びとは何なのか?という迷いや悩みと、
レールに乗れば約束された将来との間で揺れる様を描いた青春コメディです。

というのは、第一部で!

その彼らが、大学を卒業してゆきどのような人生を歩んでいくのかが描かれた第二部。
合計3時間に渡る壮大な作品です。(笑)
※かなり見やすいタイミングで一部が終了する親切設計です。途中休憩を数日挟んでも楽しめる…かな?


・背景考察 ※ここからはネタバレ

本題に入ります。
が、かなり作品の暗い部分に焦点を当てた考察です。
この先を読むのは、作品を見てからにすることを強くおススメします!
ですので、ここにリンクを投下。

 

 

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この作品は制作されたインドが抱えている近年の諸問題を全編通してコメディタッチで描いています。
主にグローバリゼーションと社会伝統との摩擦で浮かび上がって来たものが多いです。
かなり痛快なコメディなので、他国在住者が見ていても素直に笑えてしまうのですが、
私は当事者だとそう簡単に笑えないかなりブラックな内容だと思います。


・エンジニアがなぜエリート?

主人公たちが通う大学は様々な分野でエンジニアを養成することに長けた大学です。
みんな「エンジニアになれば将来は安泰だ!」と親から言われたり、自らの進路に決めたりしています。
これはフィクションではなく、インドで実際に起きている社会現象なのです。

インドにもIT化の流れが1980年頃から浸透しました。
新しい産業であるIT業界はインドで根強く残るカースト制度に侵されていない希望の新大陸となっていったのです。
特にカーストにおける階級の低い出身を持つ者たちにとっては。
それこそ古い慣習の残る国や田舎を離れ、IT産業の中心アメリカに渡ってより成功者となる道が開けるかもしれないのです。

けれど…誰もがエンジニアにさえなれば!ひしめいた結果、大学から続くエリート街道の倍率は高くなり、
当然競争に耐えきれない人が出ます。そうなった時の若者の選択は…。
この先については、ぜひ本編を見てほしいと思います。日本人には共感しやすい話かもしれません。社会現象です。

 

・キセキのゴーカン

こっちはハッキリ言えば笑ってすましてはいけない部分かもしれません。
ヒンディー語で「奇跡」と「レイプ」は少し発音が近く、それを逆手に取ったジョークのシーンがあります。

一応救いとしては、主人公がこのジョークを扱うシーンはあまり面白くありません。
周りの男子学生たちは馬鹿笑いしていますが、かなり不愉快な印象を抱かせるシーンにもなっています。

これも実はインドにおける社会問題です。
伝統的に女性の地位が低く扱われることが多かったため、男性から女性への性暴力が長年通俗化し問題になっています。
近年ようやく問題意識が高まっている段階ともいえるでしょう。

作品内ではわざと「ゴーカン」と連呼させるよう仕向けるシーンがありますが、
当たり前のように「ゴーカン」と発言させることはとても悪質なふるまいなのです。


・まとめ

作品を知り、背景にある社会情勢に目を向ける。

たまにはそんな映画の見方をしてみるのもいかがでしょうか?

以下の参考ページに今日の考察で取り上げた社会問題の詳細リンクを貼らせて頂きます。

久しぶりに社会学部卒業らしい記事になりました。学んだことは活かすとしましょう。(笑)

 

 

 

※参考ページ

・朝日新聞GLOBE+ インドのIT化と自殺問題と

https://globe.asahi.com/article/12534952

 

・ハフィントンポスト インドの性暴力犯罪について

https://www.huffingtonpost.jp/2015/01/12/india-rape_n_6453902.html

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