想稿・銀河鉄道の夜という脚本について

今日は北村想さんの脚本「想稿・銀河鉄道の夜」を紹介します。

宮沢賢治による銀河鉄道の夜を演劇台本として戯曲化し1986年に初演、その年に第一版が出版されています。
銀河鉄道の夜は1985年にアニメ映画化され、翌年にかけて一大ムーブメントを起こしていたのかもしれません。(※軽く調べましたがわかりませんでした)
ちなみにアニメ映画版の脚本は別役実さんです。

 

さて、そんな年代に書きあげられたこの脚本ですが、比較的原作に忠実な脚本という印象です。忠実でありつつも、哲学的要素の強い原作が解釈しやすくなるようになっています。

 

原作同様に、短い呟きのような会話と問い掛け合いの連続。
そして時々挟まれる長文は、対話と言うよりは発話者が自分に言い聞かせるようなセリフが多い。発話者自身が聞いたこと、見たこと、学んだこと…。
詩的な雰囲気がより強く、「銀河鉄道の夜」の綺麗な情景を背にする人たちの存在が浮かび上がります。

 

●原作との違い

「草稿・銀河鉄道の夜」は現在脚本が公開されており、アクセスすれば誰でも作品を読む事ができます。

http://suiseidou.cool.coocan.jp/archive/index.html

 

その上で、ここからはネタバレになりますので、先に原作と脚本を読み比べることをお勧めします。

※スクロール願います。

原作と大きく違う点が、乱暴者のザネリと客船から来た青年が重なり合って描写されるところです。
同一の役者が演じることを前提に書かれています。
客船と川舟とがリンクしています。

もう一つ、原作ではジョバンニとカムパネルラは銀河鉄道に乗って一夜の夢のような旅に出ますが、脚本では列車に乗りません。
銀河ステーションの待合室から見える景色、訪れる人たちを通して全ての話が展開してゆきます。


●上演するならここに気を付ける

ここからはあくまで私見ですが…、
上記の脚本と原作の違いから、書かれたそのままに表現すると綺麗なまま綺麗なだけに終わるかもしれないと感じました。

銀河鉄道の夜はその美しい世界観で人気の高い物語だと思います。

どうして美しく感じるのでしょう?
誰が誰にその美しさを伝えたいのでしょう?

もしこの脚本を上演するなら、こういった問い掛けを忘れずにいたいなと思います。

 

2021年、大きな地震があったあの日からいよいよ10年経つことを思い出しています。
2月13日、つい2日前の揺れはどうしても意識せざるを得ませんでした。
宮沢賢治の育った岩手県で、彼が生まれる直前と晩年に大きな地震が起きていることは有名です。

 

 

※参考ページ

北村想さんの公式ブログ ※作品上演に当たっては必ずご許可を頂きましょう

http://6659893.cocolog-nifty.com/

 

青空文庫 宮沢賢治「銀河鉄道の夜」

https://www.aozora.gr.jp/cards/000081/files/456_15050.html

 

(おまけ)

北村想さん出演 映画「トキワ荘の青春」公式サイト 

本番ページ

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