キルとは着ること生きること

今日は野田秀樹さんの「キル」という脚本を紹介します。

演劇界ではものすごく有名な野田さん。

その脚本と言えばまず思いつくのが「言葉遊び」です。
「キル」にも沢山の言葉遊び、掛詞が登場します。
掛詞は音になってからその効果が発揮されるものなので、脚本をただ読むより声に出して読んでみた方が発見が多いかもしれません。
しかも誰が発するかで印象が全然変わるのが、また言葉の性質です。複数人で読んでみるとなお面白いかもしれません。
「キル」とは着ること、切ること、生きること、その裏返しでKILLでもある、なんてことをみんなで喋りあってみる。

こんなことをしている内にもう実際にお芝居をしてみたくなっちゃたり…。恐るべし野田秀樹…!

そんな野田さんが、自身の劇団解散とその後のロンドン留学を経て設立した演劇制作団体NODA・MAP。

その第一回目の公演で上演された脚本が「キル」です。
「キル」では言葉遊びというだけでなく「言葉」の存在そのものを重視した脚本になっています。

これまた演劇界では非常に有名な作品。

あらすじがそのままNODA・MAP公式サイトに書かれております。まずはこちらをお読みください。
NODA・MAP 「キル」あらすじ


ようやく本編紹介します。(笑)


「キル」はモンゴル帝国の覇権を世界に広げたジンギスカンの一代記を「ファッション」を通して描いた脚本です。

歴史上のストーリーを現代社会現象を使って展開させる。想像もつかなかったような痛快な構成になっています。

「ファッション」を世界に広げる、世界の覇権を取りに行く。
これは80年代に日本のアパレル産業がバブル景気で盛り上がると共に、日本人デザイナーとDCブランドがどんどん世界に進出する機会が増えた情勢を反映しています。
「流行」という概念が強大だった時代ではないでしょうか?

しかし、流行は当然勢いを増しては衰退するものです。
野田さんの最初の劇団も80年代には流行の一つになった部分があり、そのことに対する俯瞰的な目線があったのかもしれません。
つまり日本の社会現象を、歴史上のジンギスカンを通して日本人が外から見つめやすくしたと言うべきか…。

その中に、普遍的な存在としての「言葉」を象徴的に描いています。
史実でも遊牧騎馬民族の一つに過ぎなかったジンギスカンの一族は元々文字を使うことなどなかったのですが、帝国化した偉業を後世に残していく過程で文字の重要性を認識してゆきます。
それは図らずも自分の外側の世界との接触によることがきっかけでした。


…まあ書こうと思って書ける脚本ではないですね。(笑)
壮大な物語の中に、現代に対する視点と普遍的な存在(もちろん言葉以外の要素もあります)を見事に織り交ぜた(織り交ぜられています!沢山の糸から紡がれた一枚の布、あるいは服のよう)脚本です。

野田秀樹さんの作品は、私は作品だけ見ても台本だけ読んでも辿りきれないと感じる事が多いです。
ぜひ上演作品を観ると共に脚本を読んでゆきたいと思います。

「キル」を読んでみたくなった方は、参考ページのリンクからどうぞ。

 

 

 

●参考ページ

・NODA・MAP公式サイト 脚本の上演許可申請などのお問い合わせ先もあります。

 
 

・Amazon キル 販売サイト 

 
 

・日本航空協会より 加戸信之さんによるモンゴルの歴史解説

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