テンペスト!
今回はまたシェイクスピアの戯曲紹介です。
「テンペスト」
「嵐」という意味です。
シェイクスピア戯曲の中では最後に書かれたとされ、「ロマンス劇」と呼ばれる作品群に分類されることが多い作品です。
物語の結末やムードは明るく終わるものの、喜劇とも決めつけれない。
そして中世ヨーロッパのロマンス文学作品と似た構成がある。
こういった特徴のあるシェイクスピア後期の作品がロマンス劇と分類されています。
しかしただのロマンス劇としてではなく!
この作品の最大の特徴にして人気の理由は「解釈が広がりやすい」ことにあると思います。
例えば戯曲の最後に、主人公自らの独白で「私を自由にしてくださるよう(客席の)皆様拍手をお願いします」という内容のセリフがあります。
いやいやそんなこと言われたら拍手をするしか…と思うかもしれませんが…
果たしてそうでしょうか?
物語を拍手なんてできないような作品に、もし演出家が仕上げたら?
※ネタバレ防止のため中身はスクロールで↑
実際、第二次世界大戦以降は、
例えば1963年にはクリフォード・ウィリアムズ演出で、超近代的な舞台美術(ベルトコンベアーで運ばれる登場人物)や、
主人公プロスペローも決して平和的に物語を終えず、「老い、疲れ果ててミラノに戻る」(前川正子氏によるテンペスト解説、白水社版テンペストに掲載から抜粋)
というような演出がなされたり(この演出に関してはあのピーター・ブルックともかなりの議論があったと、同じく前川氏による解説あり)しています。
あるいは植民地時代への反省から、
島に後から辿り着き、「魔法」で島の王となったプロスペローをアフリカ系の役者が、
元から島にいたが、文明的知識がない故に「奴隷」とまで呼ばれて従属させられてしまったキャリバンを欧米系の役者が演じる。
こんな上演も行われていたらしいです。
なぜこんなことが起きたのか?ということなのですが、
テンペストという戯曲は、起承転結も明確で一見掴みやすい一方、理由や原因について説明のない部分もまた多いのです。
だから、登場人物たちも、名前が何で、今何をしているのか、どんな状態かはわかるのですが、
何があったから今ここにいるのか?どうしてこんな性格をしているのか?
そういった部分に絶妙に疑問を挟みやすい構成をしている。
そう思います。
そうすると、作中では明確に触れられていない部分にこそ、何があるのか?
ということを考えると物語の前や後、その外側がどんどん面白くなる戯曲とも言えるのかもしれません!
(演出家タイプの人はこういうの好きかもしれない(笑))
そしてそして!
考えを拡げる時はより沢山の人と読むのが一番です!
唐突な展開ですね。(笑)
実は今回「テンペスト」を取り上げたのは、先日参加した戯曲研究会の選定台本だったからでした。
参加させて頂いた戯曲研究会は『Zoomで戯曲研究会』というもの。
主催されているのは早坂彩さん。
トレモロ主宰で、青年団にも所属されている演出家の方です。
研究会は、昨年外出自粛が発生したことをきっかけに始められた「オンライン戯曲研究会」です。
Zoomを利用して日本中の色々な所から色々な方が参加し、皆でリーディングをしてから感想・意見交換をする流れになっています。
2月23日(火)と3月7日(日) 13:00~15:30 の時間で2回
今回紹介したテンペストの後半をリーディング&研究が行われていました。
今後も継続してオンライン戯曲研究会は行われるようなので、
興味がある方はこちらの早坂さんのTwitterアカウントからご確認ください。
https://twitter.com/ayayan_
ただ1人で読むよりも世界がぐっと広がりますよ!(と私は思っております)
※参考ページ
Amazon:テンペスト 白水Uブックス 1983年訳版(他にも多数の翻訳版あるのでぜひ)
桝井智英さんYoutubeチャンネル ますい演劇道場より 「社会と向き合う俳優:ケネディーの言葉から始めよう。」
https://www.youtube.com/watch?v=AIC2tF6y13g&list=PLMMKi8a4CHJ3IAf_tsBtsnJLsZUmzfn6N&index=25